コトのデザインとは?

「コトのデザイン」とは「モノのデザイン」と対を成す考え方です。一般的にデザインというと、物のスタイルや色合いを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ところで世界的には、デザインの本質的な考え方やプロセスへの認識が進められているようです。Safeology研究所・研究員の谷内眞之助によるとデザインを「モノのデザイン」と「コトのデザイン」として捉え、違いを以下のように提案しています。

図1 モノのデザインとコトのデザインの違い

モノのデザイン

 モノのデザインは、物理的なモノありき、すなわち物や形をつくることが前提になっています。その思考の流れは、物の形や色や素材から入り、機能や性能、そして扱い方から操作性や行為を考える方向にあります。この延長で生活や仕事の仕方、場や空間に思いを巡らしつつ、人の生き方や考え方、倫理や哲学を捉えようとするデザインです。物として何をつくるか、どうつくるかが主眼であり、しいて言うならば、seeds型のデザインということができます。(図1)

コトのデザイン

 一方、コトのデザインは、モノのデザインとは逆のアプローチをとり(図1)、人の生き方や理念、考え方や哲学から「誰のために、何のためにデザインするのか」から始めます。そのデザインは、新しい生活や仕事の仕方、新たな場や空間のあり方の提案になっているのかを熟考し、新たな行為や使い方から新しい働きを生み出すための試行であり、必要であれば、プロセスと考え方に応じた物を通りだす考え方です。コトのデザインの思考によって物をつくりだすこともありますが、ものづくりが最大の目的ではありません。空間や行為や働きをつくりだすデザインもあり得ます。すなわち、図案を描いたり、物をつくりだすことには固執しない、造形から解き放たれたデザインです。いわば、needs型のデザインに近いといえるでしょう。